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版権同人小説ブログ
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六年合同の校外実習が終了し各自解散となり七松小平太は近くに居た文次郎と仙蔵を誘い共に学園の敷地内へと帰って来た。
正門から入れば長閑な青年の御出迎えを受けるので塀を乗り越え、雑木林を抜ける道を選んだ。小平太は正門から行っても構わなかったが文次郎が難色を示したのだ。
「お前はああゆう雰囲気の人間を嫌いな傾向にあるな」
一歩後ろを歩く仙蔵の言葉に文次郎は
「嫌いじゃないが、まあ好んで話し掛けないな……。話が噛み合わないし」
と口を濁すので小平太は俺も噛み合わないと返した。
「小松田さんと会話してると向こうの速度になる自分が恐い」
「其れはあるな」
仙蔵の同意を得ると小平太は遥か先に紫色の衣がいるのを見付けた。
「あの先に居るの四年だよな?うん?滝夜叉丸だな?」
「田村と後は仙蔵の処の綾部だな」
目を凝らし文次郎が言うと仙蔵が明るい口調で言った。
「ああ、喜八郎な。そういえば明日は委員会だな……御疲れ、文次郎!」
「まだ始まってない」
「どうせ疲れるのだから先に言っても好いだろう」
「文次郎……御疲れ」
小平太が肩に手を置き暖かい眼差しで告げると文次郎の顔色が穏やかになった。
「お前こそ、下級生を疲れさせるなよ……小平太」
「え?俺は疲れないぜ」
「お前はな。全く其の馬力並の体力には感心するよ」
「常々思うのだがお前、力の使い方間違えてないか?」
二人の言葉に小平太は悪びれる事も無く、あははと笑った。
「褒めてないからな」
「其れにしても前にいる四年。距離が近付いているのに此方に気付く気配がないな」
「俺達まだ気配消し止めてないじゃん」
「何処かの鍛錬君がしながら行こうと言うから」
「建物に入る迄授業終了だと思うなよ、其処の髪長」
其処で会話はぷつりと途切れた。
音も気配も消した侭の状態で小平太達は四年へと距離を縮めていく。
四年の三人、特に田村三木ヱ門と平滝夜叉丸は会話に夢中になっていた。
普段は仲が悪いのに珍しいと思いながら小平太達は会話に耳を欹てた。
「滝夜叉丸の方がまだ好い。俺の処なんて怒鳴られっ放しだぜ!やれ計算が合わない字が汚い人が読み易い字を書け終ったなら下級生のを手伝えってさ……ほっとするのは委員会が終った瞬間だけで後は気の休まる時間が無いに等しい。あの人が一番苛々しているのから一年まで神経使って見ているだけで俺は涙が出てくるね」
「そう言う台詞は三木ヱ門…お前一度あの体育委員会で七松先輩の後に付いてから言うんだな。凄まじいぞ、あれは。此の私ですら絶句したからな果て無き体力に。何故あんなにも身体を張らなければならないんだ?我々は体育委員は率先して運動を行う役目がある。が、だ。何だあれは……如何して毎回委員会の仕事、事七松先輩が居る時は精魂尽き果てる迄身体を動かさねばならないのだ?本当に疲れる……」
という程、滝夜叉丸は動いてない時がある……。
未だ止まる事の無い不平不満に隣の文次郎に視線を移すと顔に青筋が立っており閉じている唇の端が吊り上がっている。
此れから起こる事態を予測し小平太と仙蔵は耳を塞いだ。そして、其れは行われた。
「田村三木ヱ門っ!」
地獄の様に低い一喝が周囲に響き渡ると鳥がちゅぴるりぴと鳴きながら枝から飛び立った。
三木ヱ門と滝夜叉丸が凍り付いた様に動きを止めた。心成しか三木ヱ門が震えている。
「……此方を向け」
腕組みをしている文次郎の命令にぎぎぎと三木ヱ門が振り返った。
「滝夜叉丸ー?何処見てんだ?お前もこっち向けよ」
微動だにしない滝夜叉丸に声を掛けると滝夜叉丸は振り返るなり頭を下げ謝罪した。
「す、すいませんでした!」
「おいおい、如何したんだよ。俺は別に怒ってなんかないぞ。気にするな」
「な、七松先輩」
涙目の滝夜叉丸に笑顔を向け小平太は言葉を続けた。
「お前今度俺と連続5回当番一緒ね」
「………………」
其の横では仙蔵が我関せずといった風情で立っている喜八郎に問い始めていた。
「お前は私達に気付いていたね?」
「ええ、まあ」
「だから私の不満は言わなかったのかな?」
「まさか、そんな。僕が先輩に不満なんて……先輩、笑顔だけど目が笑ってません」
「気のせいだよ、喜八郎」
「……ええ、そうですね。僕の見間違いです」
小平太の隣では相変わらず文次郎が一言も発せずに顔を伏せ震えている三木ヱ門を睨み続けている。睨まれている三木ヱ門の顔色は蒼白に近い。
沈んでいる滝夜叉丸から真青な青空に目を向け小平太は心の中で呟いた。
今日も天気は好いなあ。
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